1. TOP
  2. 繊維と製品
  3. 化学繊維の種類と機能 ータクティカルギアを構成する繊維その2ー

化学繊維の種類と機能 ータクティカルギアを構成する繊維その2ー

|

化学繊維は、天然繊維と同じかそれ以上に私たちの日常で見かける機会があるほど、馴染みのある繊維です。そして、私たちの制作するタクティカルギアの大部分を構成するものが、化学繊維です。今回は、化学繊維について、どの様なものか、種類や機能などを見ていきます。

化学繊維は、何から出来ているか。

化学繊維の中でも合成繊維は、大部分が石油由来のモノマー(反応性の小さな分子)から出来ています。モノマーは重合(高分子化反応)によって繊維化することが出来るポリマー(モノマーが多数結合した分子)になります。この時、共重合という2種類以上のモノマーを混ぜて重合することで、機能性を付加することが出来ます。

ポリマーを紡糸して糸になる化学繊維

化学繊維は、ポリマーを紡糸することで繊維になります。紡糸とは、液体状のポリマーを、多数の細い穴から押し出し、細長くなった状態にし、これを固めて繊維とすることです。合成繊維は、長繊維のフィラメントにも短繊維のステープルにも利用できる便利性があり、フィラメントはフィラメント糸に、ステープルはスパン糸になります。

スパン糸は、毛羽立ちが目立つ。

フィラメント糸は、スパン糸と異なり、毛羽立ちがない。

紡糸した繊維は、数倍に伸ばすことで、ポリマーを繊維軸方向に並べて配向(繊維軸方向にポリマーが並んだ状態)させます。この配向時、隣り合う分子が規則的に並んだ部分を結晶化と言い、配向と結晶化により、化学繊維は強くなります。

以下、いろいろな化学繊維の種類についてご紹介します。

 

「ナイロン」(ポリアミド系)

ナイロンは、1935年にアメリカで誕生しました。

ナイロンの性質は、引掛強さ、結節強さ、耐摩耗、繰り返しによる疲労などにおいて、汎用合成繊維の中では高性能であり、強度が高い繊維です。また、非常に柔らかく、天然繊維ほどではないですが、吸湿性を持ちます。タフであるナイロンは、ストッキングやカーペットのほか、漁網やエアバッグ、タイヤ補強繊維、パラシュートに使われます。しかし、紫外線に当たると徐々に黄変するという欠点があります。

ナイロンの中では、アメリカで生まれたナイロン66とドイツで生まれたナイロン6などが代表的であり、両者似た性質を持っています。しかし、それぞれの僅かな特性の違いがあり、ナイロン66は比較的弾性率が大きく融点が高いため産業用繊維として優れていて、ナイロン6は染色のしやすさから衣料用として多く使われます。

 

「ポリエステル」(ポリエステル系)

ポリエステルは、ナイロンより10年ほど後にイギリスで生まれた繊維です。

ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーが、ポリエステルになります。

ポリエステルは、合成繊維の生産量の70%を占めています。PETは、飲料用ボトルにも使われており、私たちの日常には欠かすことが出来ない繊維となっています。

ポリエステルは、強度、耐熱性、寸法安定性などのバランスが良く、比較的コストが低いため、衣料用など多く使われています。しかし、染色性があまり良くなく、ナイロンに比べて吸湿性が低く、ややかたいという欠点がある繊維です。

 

「アクリル繊維」(アクリル系)

アクリル繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)というポリマーからなる繊維です。

かさ高で、軽く、柔らかく、耐光性に優れており、セーターや毛布、カーテンなどに使われています。

強度特性が幅広く、一般用途向けの普通糸はナイロンやポリエステルより低く、産業用アクリル繊維はポリエステルなみの強度があり、アクリロニトリル比率が高いポリマーは特に高強度です。さらに、アクリロニトリル100%のポリマーは、融点、ガラス転移温度ともに優れています。

 

「ビニロン」(ポリビニル系)

ビニロンは、ポリビニルアルコールからなっています。

高強度で耐光性、耐薬品性、親水性に優れていますが、湿熱安定性と染色性が良くない特性から産業用主体に使用され、アスベスト代替繊維としてのセメント補強などに使われています。

 

「ポリウレタン」

ポリウレタン(スパンデックス)は、ゴムを代替する繊維で、伸縮性が大きく、機能性のある肌着や水着などに使われています。強伸度特性がある一方で、破断強度が弱いことや日光、酸化ガスなどで徐々に黄変、脆化する特性もあります。

 

今後の「繊維と製品」カテゴリーの記事では、ナイロンとポリエステルを取り上げながら、さらに繊維について機能毎にご紹介していきます。