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MIRAI TACTICAL WORKSは、世界に一つだけの車椅子製作から始まった。

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メーカーから依頼され特注で製作した車椅子のサンプル。 部材にナイロンやアセタル、ハイパロンなどを使用し、高強度を追求。

「みらい装備工房」はタクティカルギアを作る傍らで、「みらい工房」として20年前から車椅子や重度障害児・者用の座位保持装置を製作しています。この車椅子は、車椅子シーティング協会が行う「シーティング(車椅子の選択、調整)エンジニア」の資格を持つ職人の技術を活用し、医学的、工学的根拠に基づき、利用者目線の立場で作られる車椅子です。MIRAI TACTICAL WORKSでは、車椅子製作の現場で培われた職人の技術を生かして、タクティカルギアが製作されています。また逆に、タクティカルギアで使用するナイロン部材を使って擦り切れ強度の高い車椅子も制作しています。

意外な組み合わせの車椅子製作とタクティカルギア製作のつながりはいつ、どの様にして生まれたのか、非常に気になるところです。そこでタクティカルギア製作の原点とも言える車椅子作りについて、立ち上げから関わってきた早瀬さんに聞きました。

 

フィットした車椅子の重要性をたくさんの人に伝えたかった

ーそもそも車椅子製作をどうして始めようと思ったのですか?

若い頃に勤務していた施設で、外国製の人間工学的に考えられた車椅子に偶然触れ、これまでの車椅子に比べて利用者の立場で作られていることに大きな衝撃を受けました。その頃の車椅子は今でもですが、介護する側の利便性が優先された設計のものがメインでした。

そして利用者にフィットさせた車椅子を使用することで、それまで障害が原因だと思われていた褥瘡(床ずれ)や体の変形などの二次障害を予防し、行動範囲を拡大する効果があることが分かりました。そこで、「車椅子の重要性をもっとたくさんの人に知ってもらいたい、利用者の体にフィットした車椅子を提供したい」と思い、その3年後に製作工房を立ち上げました。

座位保持クッション製作用の三次元人体採型システム

 

車椅子に米国製のミルスペックの部材を使っていたことがきっかけ

ーシーティングエンジニアの資格を持つ方は、当時全国では約400人で、県内では第1号だったと伺っています。利用者の立場に立つもの作りに触れて、一大決心をしたのですね。その車椅子作りから「みらい装備工房(MIRAI TACTICAL WORKS)」としてもタクティカルギアを製作することは、一大方向転換に感じるのですが、どのようなきっかけがあったのですか?

実は、ミリタリーやタクティカルな現場で身につける装具類が子供の頃から大好きでした。地元駐屯地の開放日など積極的に行っては、自衛隊員の方の装具類を子供の特権で触りまくっていたのが懐かしいです。その頃ちょうど専門誌が創刊されて、毎月わくわくしながら本屋に通った記憶もあります。勿論いまでも自他共に認めるギアマニアで、コットン(綿帆布)から当時最先端繊維のナイロンに偏移していく米軍のM1956頃から、現在に至るまでの装備が個人的に好きです。

そのようなバックグラウンドのなかで、車椅子製作で米国製部品を扱うことが増えていくうちに、身体保持に使用するベルト類について気がついたことがありました。筋緊張の強い不随意運動を抑制する目的のウェビングには、ポリプロピレンやポリエステルではなく、ナイロンのミルスペック17337クラス2が使用されていたのです。素材特性などからすると非常に理屈にあっていることに興味を持ち、車椅子製作にナイロンウェビングやポリアセタルバックルなどを使いはじめました。

車椅子製作にナイロンやアセタルバックルを使う様になると、好きだったギア作りにも拍車がかかり地元消防航空隊からの装備品修理や、オーダーメイドのオリジナルギアを作り始めました。ここが車椅子製作とタクティカルギアとの接点であり、タクティカルギア製作の原点だったと思います。

 

車椅子の仮合わせや試用の技術が、ギアのヒアリングやテストに活きている

ーオーダーメイドで個人に合わせて車椅子を作る技術は、タクティカルギアの製作でどのように生きてきていますか?

オーダーメイドの車椅子や座位保持装置は、数回仮合わせや試用を行ってから最終的な仕上げに入ります。この利用者一人ひとりの特徴を把握し、最適な仕様を決めるための工程が非常に大事で、手間暇がかかりますが、利用者の満足度につながるのです。また、オーダーメイド車椅子制作のノウハウが蓄積されていくことで、更なる利用者の満足につながる様になります。

この仮合わせや試用の過程で培ったヒアリングやサンプル製作などを、MIRAI TACTICAL WORKS事業では、展示会や各駐屯地に訪問する機会を活かして、現場の声をたくさん伺うことが出来ました。その中で製作したギアのテストモニターを公募し、フィールドテスト、車椅子製作でいうところの仮合わせを行っています。今後もフィールドテストを重要視して、新製品を計画していきます。

三次元採型CADを使い、体に合わせた座位保持車椅子の設計をしている。

 

最先端素材の積極活用と多様なユーザーニーズに応えたい

ー最後に、今後のギア作りの展望をお聞かせください。

現在はMOLLEシステムなど、ギアの多種多様性が求められるようになり、ナイロン主体から次世代素材へと進化のスピードが急加速しているように感じ取れます。MIRAI TACTICAL WORKSでは、今後も最先端素材を積極的に採用し、タクティカルで培ったノウハウを一般ユーザー向けギアにも応用するなど、多種多様な製品開発をしていく所存です。

ドイツ製子供用車椅子 海外製車椅子はシート類は基本ナイロン構成されており、難燃加工もされています。